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2020年12月09日

Ryzen風で言うと1CCX10コアを実現しているCore i 10900K/10850K/10900

よく爆熱、AMDの第四世代・第三世代Ryzenよりもマルチスレッド性能が低いと言われるインテルのCore i 10900K/10850K/10900。しかし、インテルは14nmという製造プロセスの範囲で、Ryzenによく対抗出来ていると思います。インテルのプロセッサは、1つのCPUモジュールに最大8コアを搭載していましたが、Comet Lake-S世代では、ついに1つのCPUモジュールに10コアを搭載する事に成功しています。3次キャッシュを各CPUコアで共有して使えるので、構造的にはRyzenのCCX(Core Complex。CPUの最小単位)と同じで、Ryzen風に言うと1CCX10コアを実現してしまっています。
一方で、AMDは第三世代のRyzen(Zen2)までは1CCX4コアでしたが、第四世代のRyzen(Zen3)では、1CCX8コアを実現しました。その結果、IPCが20%近く向上しており、マルチスレッド性能やシングルスレッド性能が大幅に向上しました。Ryzenの16コアや12コアはCCXを2つ搭載して実現しており、この2つのCCXを接続しているのが、Infinity Fabricというバス技術です。このバス技術のおかげで、Ryzenはx86系プロセッサで最強のマルチスレッド性能を有する事になりました。

◇シングルスレッドでも最速。「Zen 3」採用の「Ryzen 5000」シリーズ徹底検証
https://www.gdm.or.jp/review/2020/1105/368230

◇Core i9-10900KとCore i7-10700K、Core i5-10600Kの性能を速攻検証
https://ascii.jp/elem/000/004/013/4013474/2/

こうして考えると、Core i9-10900K/10850K/10900の消費電力が高い理由も分かると思います。1CCX10コアでオールコアブーストクロック4.9GHzという凄まじい仕様では、仕方が無いでしょう。

では、似たような構成の第四世代Ryzen(Zen3)とCore i9-10900K/10850K/10900でシングルスレッドの性能に差が出た原因は何なのでしょうか?
1つ考えられるのは、第四世代Ryzenは1CCXに32MBの大容量3次キャッシュを搭載している事です。Zen2までは1CCX4コアだったので、実質1CCX当り16MBの3次キャッシュしか使えませんでした。インテルの場合、Core i9-9900Kの時点で8コアの1CPUモジュール当り3次キャッシュが16MBで、Ryzenの考え方で言い直すと1CCX8コアで16MBの3次キャッシュが使えていたという事になります。
ところが、Zen3で1CCX8コアになって、1CCX当り32MBの3次キャッシュが使えるようになった事で、1CPUモジュール当りの3次キャッシュの容量が大幅に逆転しています(Core i9-10900Kは3次キャッシュ20MB。即ち、CCX10コアで3次キャッシュ20MB共有に相当)。これが、Zen3がComet Lake-Sよりもシングル性能が上になった理由ではないかと思います。

2021年3月に登場するとされているRocket Lake-Sでは、1次キャッシュ・2次キャッシュの容量がSkyLake系時代よりも倍になっていますが、8コアの1CPUモジュールと3次キャッシュ16MB共有が最高となります。現在のところ、AMDはRyzenを1CCX16コア化するのはZen4以降と思われるので、インテルがRocketLake-Sで最大8コアに戻すのは、製造プロセスの遅延があるにしろ、CPUの構造上妥当な事に思えます。

このRocketLake-Sは、IceLakeのアーキテクチャーであるSunnyCoveを14nmにバックポートされた物である事が海外サイトで報じられています。つまり、RocketLake-SのCPUアーキテクチャー「Cypress Cove」は、次の世代のプロセッサであるAlderLake-Sのビッグコアのベースになると思われるので、リークされている内容を見る限りは、かなり消費電力が高くなりそうですが、AlderLake-Sのほんの一部分を体感するのには面白い世代でしょう。
posted by takatan at 23:18| 大阪 ☀| PC and Phone | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする